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キラリティ研究を起点に広がる融合研究:
宇陀研究員がWPI-SKCM²で学んだ「研究を分かち合う」ということ

科学への強い情熱とキラリティへの好奇心を原動力に、若手化学者の宇陀任人は、大学院での研究生活を広島大学の持続可能性に寄与するキラルノット超物質拠点(WPI-SKCM²)でスタートさせました。井上克也教授の指導のもと、キラル材料への理解を深めながら、研究者としてのスキルを着実に磨いています。

研究を進める中で印象的だったのは、学術的な学びにとどまらない、研究環境そのものの雰囲気でした。分野の異なる研究者に囲まれ、日常的なやり取りを重ねる中で、専門の枠を越えた視点に触れる機会が自然と生まれていきました。

対話型イベントが生み出す、尽きることのない学びの機会

当初は、WPI-SKCM²では実験を軸に研究を進めていく日々を想像していました。ところが、拠点が用意していたのは、その想像をはるかに超える多彩な学びの場でした。セミナー、季節ごとのスクール、国際会議などを通じて、分野の異なる研究者と交流する中で、分野横断的な融合研究への関心も次第に高まっていったといいます。


「WPI-SKCM²の大きな特徴は、さまざまな分野の研究者が集まり、多様なセミナーが開催されていることです。そこから新しい知識を得られるだけでなく、共同研究につながるきっかけも多いと感じています」と語ります。

SKCM²に来る以前は、科学研究の世界に対して、どこか堅苦しく、教授は近寄りがたい存在だというイメージを抱いていました。ところが、実際に過ごしてみると、拠点の雰囲気は温かく、安心して研究に向き合えるものでした。教授陣も親しみやすく、日々の研究を後押ししてくれる存在であると感じています。

文化体験を通して広がる視野

科学を専門に学んできた中で、文化と科学が密接に関わっているとは考えていませんでした。人や文化的背景に触れることが研究に影響するという発想自体がなかったといいます。しかし、国際色豊かな研究環境の中で、その考えは少しずつ変わっていきました。

「さまざまな分野を学び、多様な活動をしている人たちと出会うことができました。視野を広げて、日本以外の国や地域の話に触れられることは、とても素晴らしいと感じています」と語ります。

異なる国や文化的背景をもつ研究者と共に過ごす中で、考え方や問題への向き合い方、科学の捉え方にも違いがあることに気づくようになりました。そうした違いに触れる経験が、自身の研究の進め方を見直すきっかけにもなっています。いまでは、科学だけでなく、人についても学び続けたいという思いが強まり、多様性を大切にする研究環境づくりにも関わっていきたいと考えています。

フュージョン・プロジェクトで実感した学際的な学び

WPI-SKCM²には、分野や国籍の異なる研究者が集まる一方で、日常の研究では深く関わる機会が限られることもあります。そうした状況をふまえ、拠点では研究者同士が交流できる場づくりにも力を入れており、その一つが2025年のウィンタースクールで実施された「フュージョン・プロジェクト」でした。

このワークショップでは、異なる研究分野を背景にもつ若手研究者が集まり、複数の分野の視点を取り入れた共同研究のアイデアづくりに取り組みました。普段の研究では接点の少ない研究者と意見を交わす時間そのものが、印象深い経験だったといいます。


特に心に残ったのは、自己紹介や研究内容の説明といった何気ない場面でも、分野ごとの考え方や視点の違いがはっきりと表れることでした。最終的には、複数分野の要素を取り入れた研究アイデアをまとめることができましたが、それ以上に、それぞれの分野がどのように研究や知識と向き合っているのかを知れた点に、大きな学びを感じています。こうした気づきは、今後の研究活動だけでなく、長い目で見た自身の成長にも影響していくと語ります。

今後に向けて

「いまの段階で将来を決めてしまうよりも、まずは目の前のことにしっかり取り組み、選択肢を増やしていくことが大切だと思っています」と語ります。

修士課程1年として、研究者としての歩みは始まったばかりです。現時点で明確な将来像があるわけではありませんが、拠点での経験を通して、研究者のキャリアは一つに定まったものではなく、分野や立場を越えて広がっていくものだと感じるようになりました。

先のことを急いで決めるのではなく、いま取り組んでいる研究に丁寧に向き合うこと。その積み重ねが、これからの可能性を広げていくと考えています。こうした姿勢は、分野や国を越えた研究者が集い、互いに刺激を受けながら学べるWPI-SKCM²の環境の中で育まれてきたものだと語ります。



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